響は謙太郎を唆す

あまり話をせずに響の最寄駅まで着いてしまった。
小1時間かかっていた。
降りる時、謙太郎はまた響の手を取って握った。
手を繋いだまま改札口を出て、歩き始めようとするので、立ち止まって謙太郎を見た。

「家まで送る」

謙太郎は素っ気なく言って動かないので、響は小さな声で、

「ありがとう」

と言った。

響の家は駅から10分ぐらいの所にある。
まっすぐ行って、信号のある所を左折して、次の信号を右折して右側の家、道はそんなにややこしくはない。
今日は学校は昼まで、それからカラオケに行ってその帰りだから、時間はわりと早かった。
響は家の門の前で「ここだから」と言ってから、

「駅まで送ろうか?」

と謙太郎に聞いたら、笑われた。
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