響は謙太郎を唆す
5 謙太郎の強引なキス

7月に入った。
テストの結果は、響は推薦を取るのにまず充分な成績だった。
結果をふまえて、一人一人順に担任と面談していく。
隣の空き教室の真ん中あたりの机が4つ向かい合わせにされ、名簿順に生徒が自分の教室から出てその部屋に行く。

響の順番で「戸波です」と教室に入ると、先生はこちら向きに座っていて、響は真正面の椅子に座らされた。

顔を見た瞬間、

「あなた、内藤くんと最近仲がいいの?」

と先生に聞かれた。
まさか、それを最初に聞かれると思わず焦る。

「はい⋯⋯ 友達です⋯⋯ が⋯⋯ 」

先生はすごいため息をはいた。

「信じられない。内藤くんに迷惑だと思わないの?」
「迷惑?」
「いい、内藤くんは、医学部に行く。あなたみたいな子が友達なんて!悪い女生徒が近づかないよう、お母様から良くお願いされてるのに!」
「⋯⋯ 」

(悪い女生徒⋯⋯ って、私⋯⋯ ?)
と響はキューっと気持ちが硬くなるような気がした。
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