ある朝のことだった。
 いつものように登校をして教室へ入ると、なんだか教室が騒がしい。
 よく見ると、森さんを中心にクラスの半分くらいの女子が後ろの方で固まって、あれやこれやと大きな声で話をしている。
 私はそれを不思議に思いながら自分の席へ着いた。
「えー!でも今までそんな話なかったじゃない!なんで急にそんなこと言いだしたんだろ?」
「わかんない。でも私はっきりと聞いたよ」
「適当に言ったんじゃない?」
「王子がそんないい加減なこと言うかなぁ?」
 女の子達の口から出た"王子"の言葉に、私の胸がどきりと鳴った。
 みんな悠馬の話をしてるの?
 鞄の中身を出そうとしたまま固まってしまった私にいつのまにか近くに来ていたさっちゃんが、言った。
「おはよう、るり。朝から大変なことになってるよ」
「おはよう、さっちゃん。…何があったの?」
 さっちゃんが私に顔を近づけた。
「森さんが昨日王子に告白したらしいの」
「え?!」
 驚いて、私の口から少し大きな声が出てしまう。でももともと騒がしい教室では誰も気に留めなかった。
 それにしても、昨日も私は悠馬に会ったけど、そんなことは一言も言ってなかった。
 上級生に告白をされるなんて、これがもし私だったら大事件なんだけど、悠馬にとっては話題にする必要もないくらいのことなのかな。
 昨日も彼は、サッカーの話とテレビの話を楽しそうにしていただけだ。
「森さん、他に好きな人がいてもいいからつきあってほしいって言ったんだって。ほら、もうすぐ夏休みでしょ?その間に、絶対に自分を好きにさせてみせるって」
 さっちゃんは、私にだけ聞こえる小さな声でささやいた。私は目を見開いて女の子達の中心にいる森さんを見る。
 今日はふわふわの髪をツインテールにして唇にはキラキラのリップグロス。先生に注意を受けるギリギリのところでかわいくしている彼女はさすがだとは思うけど、それにしてもすごい自信。