森さん達につめよられた時、雨に当たって濡れてしまった私は、そのまま熱を出して二日間学校を休んでしまった。
 その間、ぼんやりする意識の中で私は悠馬とのことを考えた。
 悠馬の口から他に好きな人がいるって言葉を聞いたなら、私がやらなくちゃいけないことは一つだ。
 本当はあのデートの日に言うつもりだったこと。
"もう、終わりにしよう"
 それを悠馬に伝えなくちゃ。
 私はあのデートの日の悠馬を何度も何度も思い返した。
 あの日の悠馬は本当に完璧な私だけの王子様だった。私だけを見て、私のことだけを考えてくれてるような…。
 悠馬って、本当に罪つくりなやつ。
 あんな風にされたら、誰だって勘違いしちゃうよ。もしかしたら、私のことが好きなのかもって。
 いつかは言ってやらなくちゃ、あれはダメだよって。そう、いつか…。
 …でも今はまだそんな冗談を言える自信は全然ない。きっと、私の気持ちに気づかれないように、泣かないでお別れを言うのが精一杯なんじゃないかな。
 夢の中で、"るり"っていう悠馬の声を何度か聞いたような気がした。
"るり、ごめんな"って。
 謝らないで、悠馬。悠馬は何も悪くない。
 私、悠馬の彼女になれて、楽しかった。
 すごくすごく、楽しかった。
 それに…大切なこともおしえてもらった。
 悠馬がくれた初めての恋は、たとえ実らなくてもきっとずっと胸の中で輝き続けるんだ。
 私はそれを大切にして、私のやるべきことをやるね。
 それが私に初恋をおしえてくれた悠馬にできる唯一の恩返しのような気がするから…。