翠玉の監察医 法のあり方
四 審判の時
朱莉が帰っていったその夜、透から電話があった。内容は由美子の解剖を依頼するもので、ゼルダたちは「よかった、これで事件が解決できる」とホッとしていた。

解剖の準備を進め、透と朱莉が由美子の遺体が入った棺を持って葬儀屋と共にやってくる。二人の顔は真剣なものだった。

「ご協力、ありがとうございます」

碧子が頭を下げ、蘭たちも頭を下げる。そして二人には待ってもらうように言い、碧子たちは解剖室へ由美子の遺体を運んでいった。

蘭も解剖室に入ろうとすると、「待って!」と朱莉に手を掴まれる。

「絶対、犯人捕まるよね?」

朱莉が不安げに言い、蘭は優しく微笑みながら言った。

「由美子さんの死を無駄にはさせません。必ず、裁きを受けさせます」

ずっと無表情だったはずの蘭の微笑みに、透と朱莉は頬を赤くして固まる。蘭はそのまま解剖室へと入り、黙祷を捧げた。

「包囲学の、希望に」

蘭はそう言い、目を開ける。そしてメスを手に取って解剖が始まった。
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