翠玉の監察医 法のあり方
由美子の体は事故の影響で悲惨なことになっていた。折れた肋骨が肺に何本も突き刺さり、潰れてしまった内臓もある。それだけ大きな事故だった証拠だ。

「これで救急車を呼ばなかったなんて、許せません!」

圭介が震える声で言い、圭介と同じように解剖の様子を見ている桜木刑事も「この様子を上の人間に見せてやりたいよ」と言っていた。

蘭はただ、解剖に集中して体を観察する。死者の伝えたいことを逃さないために、脳裏に由美子の体を焼き付けていった。



事故から三ヶ月後、蘭たちは世界法医学研究所の部屋に置かれたテレビに釘付けになっていた。そこでは今、裁判が開かれており判決が出る瞬間を報道陣たちは今か今かと待っている。

「速報です!たった今西園寺グループのご令嬢、西園寺玲奈被告に懲役三十年の判決が下されました!」

ニュースキャスターが速報で判決内容を伝え、ゼルダと圭介が「やった〜!!」と言って抱き合う。アーサーとマルティンはホッとした顔をしていた。
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