翠玉の監察医 法のあり方
警察は当初、ひき逃げ事故のことを揉み消そうとしたが、目撃者が多くいたことや防犯カメラの決定的な証拠に玲奈を逮捕するしかなく、裁判が開かれたのだ。

それでも警察は玲奈の罪をできるだけ軽くしようとしたものの、碧子が解剖の結果を伝え、悪質な運転によって一人の人生が奪われてしまったことを熱く語り、判決が下ったのだ。

「神楽さん、よかったですね!これで朱莉さんたちも報われます!」

圭介がそう言い、蘭は「そうですね」と頷く。すると蘭のスマホに電話がかかってきた。朱莉からだ。彼女は被害者の家族として裁判に透と共に出廷していたのだ。

「はい、神楽です」

蘭が電話に出ると、「先生、ありがと……」と鼻を啜りながら朱莉が言ってきた。声は震え、うまく話せていない。それでも蘭は朱莉の言葉に耳を傾けていた。

「先生のおかげで、悪い人、捕まった……。あんなことを言って、ごめんなさい。ありがと……」

「いいえ、無事に判決が出てよかったです」

蘭がそう言うと、電話の向こうで朱莉はさらに泣き始める。蘭は「たくさん泣いてください」と両親の葬儀に来てくれた時の星夜を思い出しながら言う。

蘭の目にも、涙があった。
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