お見合いは未経験
3.成嶋部長、登場!
「次長、決裁お願いします。」
「はい。」

異動してきてからの榊原は、どんな相手にも仕事先では敬語を崩さないことに決めている。
それが、部下でも、年下でも。

年が若い次長だと舐められるのもごめんだし、おもねっているとも思われたくない。

その時、手元に来た書類は今度、支店で企画する相続セミナーの企画の承認書類だった。
企画には、共催として、真奈の信託銀行の名前が入っている。

「へ…え、今度のセミナー、信託と協働なんだ。」
「そうなんです!」
普段、あまり榊原に話しかけられない部下は、舞い上がってしまう。

「専門家が話してくれるそうです。結構うちでも人気のセミナーなんで、もう、予約はいっぱいなんです。30人の定員なんですけど、すぐ埋まっちゃいました。相続って、皆さん興味あるんですね。」
「そうか。」

予算や場所、人数などざっと確認して、承認印を押す。
「じゃ、よろしくお願いします。」
「あの…次長…」
「はい。」

「今日、信託で打ち合わせなんですけど、同席してもらうことは出来ますか?急で申し訳ないんですけど。」
確かに、座って決裁ばかりもどうかとは思っていた。

「いいですよ。」
「あ、では、先方に伝えておきます!」
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