お見合いは未経験
12.幸せに暮らしました
天気の良い、日柄の良い日にそれは執り行われた。
梅雨の半ばであったにもかかわらず、その日は今後の2人を祝福するような天気だった。

場所は真奈の実家である。
その和室にいるのは、榊原家の両親と貴志、真奈と真奈の両親。

「幾久しくお受けいたします。」
畳に両手をついて、頭を下げた真奈のさらさらした声が耳に届く。

2人の話し合いで仲人は立てず、でも家族顔合わせの意味でも、結納はやろうと言うことになったのだ。

最初のお見合いの時とはまた違う振袖の真奈は、相変わらず、日本人形を思わせる。

では、会場を移しましょう、と言う小笠原家の当主の声で、移動するのはタワーの最上階の個室だ。

そこでは、貴志の兄に当たる貴広夫婦がすでに待っていた。
初めまして、と両家の家族が挨拶を交わしている。

「本当に結婚ってお家同士のものでもあるんですね。」
真奈がそうっと貴志に囁く。
「覚悟はしていたけどね。」

それでも、まだ長男でないだけマシかも、と貴志は思う。
だからこそ、このプレッシャーに負けない兄は尊敬の対象でもあるのだ。

結婚式の準備も徐々に進みつつある。
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