極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
一、順風満帆の幸せな生活
 各国の大使館が多い都心の高級住宅街に、いわゆるお嬢さまが通う私立女子大学がある。私、荘田(しょうだ)美月(みつき)はその大学の四年生に在籍している。

 夏が終わっても緑の中にあるキャンパスに紅葉(こうよう)の気配はまだまったくないが、空や風は秋めいてきた十月の中旬。私は華奢な腕時計へ視線を向けながら、急ぎ足で門へ向かっていた。時刻は十五時を過ぎている。

 土曜日になるといつも思う。なぜ講義を入れてしまったのだろうと。しかも中途半端な時間である三限目に。

 でもそれは英語コミュニケーション学科の有名なブライアン教授の講義を絶対に受けたかったからなので、仕方がない。

 ブライアン教授はイギリスの有名大学から客員教授として招かれており、彼の講義を受けたい学生は数えきれないほどいて受講にあたっては高い倍率だった。

 勉学に身を入れるべき立場だから講義を優先するのは仕方がないと思う反面、やはり後悔も否めない。

 高級住宅地だというのに広い敷地のキャンパス。校舎から門までは五百メートルほどあり、まっすぐの道をひたすら突き進んだ。

 勢いよく歩くと、肩甲骨くらいまであるブラウンの髪が頬をくすぐる。今日の予定のために髪を緩く巻き、講義後にリップをさっと塗り直している。

 門を抜けたとき、少し息が上がっていた。

 私がなぜ急いでキャンパスを後にしたのか。それは――。
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