不完全な完全犯罪ZERO
ゴールドスカルのペンダントヘッドの行方
 刑事と別れて俺達は原田学とお別れをするために焼香の列に並んでいた。
その時、何かが光った気がした。
それが何なのか物凄く気になり俺は其処に目をやった。


(あっ、あれはチェーンだ。あの色はボンドー原っぱが持っていたのに似てるな)
何気にそう思っていた。

 帰り間際に気が付いた。
レポーターの質問攻めにあっている男性の首にあのチェーンらしき物が掛かっていることに……


(もしかしたら?)

俺はわざとソイツの前に出て行った。
その男性はさっき俺が気になった人だった。


(あっー、やっぱり)

すれ違いざまに確認すると、それは確かにあのペンダントヘッドの付いたチェーンだった。
俺は木暮に目配せをして、それを見るように仕向けた。
本当は遣ってはいけないことなのに、俺は黙っていられなかったのだ。


想像した通り、木暮の顔から血の気が引いていく。
俺はそんな木暮を気遣いながら、そっとその場を後にした。


(何を今更。それを遣るなら、あんな物を見せないことだ)
俺の心が葛藤していた。


(木暮ごめん。俺は自分勝手のバカモンだ)
幾ら謝っても済むことじゃない。
解っていながら、頭を下げた。


「いいんだよ磐城。本当は見たくなかったけど、何が凶器になったのか知っておきたかったから……」
木暮は相変わらず気遣い上手だった。




 俺は直ぐさま刑事を探し、ゴールドスカルのペンダントヘッドを見つけたと話した。
刑事は同僚の刑事と一緒だったが、何はさておきとばかりに二人で駆け付けてくれた。


もう一人の刑事もみずほの事件も担当していたので、俺の姿を見た途端に一大事が起きたと思ってくれたようだ。


俺達は善は急げとばかりにさっきの場所に駆け付けた。
でも男性は其所から居なくなっていた。


「あの時俺が此処に残ってさえいれば」
木暮が辛そうに言った。


「ところで磐城君、この人は?」
木暮のことを知らないのか、同僚の刑事が言う。


そこで俺は、第一の被害者・木暮敦士の実の弟だと教えた。




 ゴールドスカルのペンダントヘッド付きチェーンをしている男性。
手掛かりはそれしかない。
それでも大きな一歩だったと言える。


「本当は彼処に居たくなかったんだ。あのままだったら、あの男性に食って掛かって行ってたかも仕方ないから……」


「木暮ごめん。俺、木暮の気持ちも良く考えずに行動していた」


「良いんだよ。もう気にするな」
木暮はそう言ってくれた。


「磐城君、悪いがその男性の特長を教えてくれないか?」


「あっ、はい解りました。髪はロン毛の茶髪です。それにピアスをしていました」


「あれっ、家の兄貴に似てるな?」
そう言いながら、木暮は持って来た携帯の画像を刑事達に見せていた。




 叔父の待つ事務所にこのまま帰る訳にいかなくて、俺と木暮は夕刻近い街を当てもなく歩いていた。


「叔父さんに何て言おうか?」


「何か解るかも知れないと思ったから、原田学さんの葬儀に出席していたと正直に言ったら」


「でも結局、何も解らなかったな」


「いや、出身地が此処だと解っただけでも進展があったと言えなくもないよ」


「それもそうか」
何故か木暮の言葉に納得した。




 
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