氷の貴公子は愛しい彼女を甘く囲い込む
「いや、そんなことないよ。いいね。おじいさんと仲が良いなんて」

 恥ずかしくなってしまった綾に間宮は優しく続ける。

「はい。大好きでした。でも、数年前に亡くなってしまったんですけど」

 祖父が亡くなったのは綾が前の会社を辞めた後の事、辛いことが重なってかなり落ち込んだ。
 
「……そうか。僕には祖父母の思い出は殆ど無いから、羨ましいよ。そういう言葉は意味があるし、忘れずに大事にしていったらいいんじゃないかな?その方がおじいさんも喜ぶと思うよ」

「……はい、そうですね」

 彼はこんな他愛の無い話でも、丁寧に真っすぐに返してくれる。
 こうして彼と並んで話すことによって心が晴れて浄化する気がする。単純なものだ。
 最近は会話することが楽しくて、彼に会えない昼休みは寂しく感じてしまうくらいだ。
   
(でも、ここの所は殆ど毎日会えてるのよね)

 間宮と初めて会ってから半年ほど経っているが、ここ最近は彼と会う頻度が上がっている気がする。
 彼もここに来るのが――綾と話すのが楽しいと思ってくれいていると嬉しいのだが。
 
「あ、もう、こんな時間。そろそろ行きますね」
 彼の祖父母の話も聞いてみたいなと思ったが、綾の休憩時間は終わりに近づいていた。
 
「本当だ――時間が経つのが早く感じるな」
 
 そう言う彼の表情は心なしか名残惜しそうに見えた。
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