氷の貴公子は愛しい彼女を甘く囲い込む
 髪の毛をアップにしてみましょうかと、店長さんが軽く髪を纏めて雫型にデザインされた揺れるパールのイヤリングを合わせてくれた。
 
 「わあ……」
 
 思わず感嘆の声が出てしまう。
 
 程よく体に沿うように仕立てられたデザインは小柄な綾のスタイルをよく見てくれるし、繊細なレースは高級感と可愛らしさもある。
 自分が年相応の素敵な女性にでもなった気になる。
 
 やはり上質なものは、違うなと感動すら覚える。嬉しくて鏡に映った自分をまじまじと見てしまう。
 
「まぁ、ネイビーが白いお肌に映えてお似合いですよ」

「大人っぽさだけでなく可愛らしさも出てらっしゃいますね」

「え、そうですか」

 店員さんたちも綾が気に入ったのを感じたのかここぞとばかりに手放しで褒めてくれるので、綾もテンションが上がってしまう。
 ネックレスはどうするとか、ショールはあった方が良いとか、試着室で暫く盛り上がってしまっていたら、外から少し拗ねたような声が聞こえて来た。
 
「……そろそろ、僕にも、見せてくれないかな?」
 
 そうだった。と笑いながら、店長さん一押しのパールピンクのヒールを履いて試着室外のソファーに座る海斗に披露する。

「どうですか?私的にはこれが一番……」

 好きです、と言おうと思ったのだが
 
 綾の姿を息を飲んだように見つめる海斗の真剣な眼差しに驚き続けられなくなった。

(自分のパートナーのドレス選びだからだからって、無駄に強い目力で全身見つめないで欲しい……)
 
 ドキマギしていると海斗はその目もと急に緩めて呟くように言った。
 
「……綺麗、だ」

「……」

 さらに綾の心臓は高鳴る。

 可愛いとは言ってくれることはあったが、「綺麗」なんて言われるのは初めてのような気がする。

「良く似合ってる、このドレスに決めようか」
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