あやかしあやなし
第五章
「おやおや、これはこれは可哀想に」

 寺につくと、惟道は真っ先に和尚に雛を見せた。胸から腕にかけて真っ赤に染まった惟道に肝を潰した和尚だが、大事そうに袖に包まれた塊を見た途端、血の元がそこにあると察し、今、雛の診察を行っているところである。

「一番酷いのは、この裂傷じゃな。おそらく鎌鼬(かまいたち)のような技を繰り出したのじゃろうて」

『わしらはそんな、汚い傷口は作らんわ。血もそのように大量に出さん』

 和尚の言い付けで水を運んでいた鎌鼬が、不満そうに言う。こちらは本物の物の怪だ。

『都の物の怪狩りのせいか』

『このような幼子に、陰陽師など酷い奴らじゃ』

 寺にいる物の怪たちが、口々に文句を言っている。章親は少し居心地悪そうに、ぽりぽりと頬を掻いた。

「これこれ、ここにも陰陽師がおるのだから、そのようなことを言うものではない」

「そうだよ! 章親のお陰で、その雛見つけることができたんだからね」

 和尚と小丸が言い、一同が黙る。

「全く、陰陽師皆が皆、そんな術試しみたいなことすると思ってるんじゃないよ」

 ふん、と盛大に鼻を鳴らす小丸に、烏兎は微妙な顔を向けた。愛宕山の麓で惟道らに見つけられてから後、烏兎は何もしていない。ただ陰陽師の手先だと思っていた惟道が烏鷺を抱き上げて簡単に診察し、次いで紛れもない憎き陰陽師が烏鷺の気を浄化して妙な気が触れないよう、綺麗な気で包んでくれた。そして火鼠を操って、ほんの数刻でここに運び込んだのだ。
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