やり直せる?

▶▶貴史side


彼女と結婚すると
夢のように思っていた日から
奈落の底に落とされた。

二度と女を信じない
そんな気持ちまでなった。

まさか、友人に取られるなんて····

そいつが、余命があって
一緒にいたかった
あなたを愛していたのには
嘘はない
と、言われても
信じられる訳がない。

それからは、仕事重視にしてきたが
母親が、俺の先々を心配して
見合いの話を持ってくる

いささか辟易していたが
父親からの連絡がきて
拓斗に相談した店で
俺の胸を書き立てるような
女性に出会った。
しかし、彼女は既婚者だった。

出会って、直ぐに失恋か
いたいなぁ·····
やはり、俺は一生独りだ。
と、思っていたら
彼女の離婚が決まり
一度は、諦めた気持ちだが再燃した。

彼女に気持ちを伝えて
彼女からも返事を貰えた。

両親もすごく喜んでくれた。
俺自身も、天にものぼるような
夢見心地だ。

紗英の離婚から半年が過ぎて
入籍をした。

式は、ほんの身内だけで行った。

紗英のウェディングドレスは、
綺麗で目が離せなかった。
紗英の娘の綾華ちゃんも
可愛い子で
俺を貴史パパと呼ぶ。

幸せ過ぎて怖いくらいだ。

そんな時····
銀行から出ると
「貴史!」
と、呼ばれた。
振り向くと
「亜也?」
俺を裏切った女性だ。
「会いたくて待っていたの。」
と、言う亜也を怪訝に思う
「会いたくて?なぜ?」
と、問う俺に
「あれから······
ずっと独りだと聞いたの。

私の責任だと気になっていたのも
ほんとだけど。
誰とも結婚もせず
私の事を忘れられなかったのかと
嬉しくて、もう····一度·······
「あり得ないよ。そんな事。
俺、結婚してるから。」
と、薬指の指輪を見せる。
彼女は、口をパクパクさせながら
俺を見ていたが····
「貴史?!」
と、俺の名前を呼ぶ愛しい妻に
「紗英、走るな!」
と、言って俺が紗英の元に行き
紗英を抱き締める
「あのね、毎回言いますが
貴史さん、ここは外ですよ。」
と、言う紗英に
「紗英さん、じゃ続きは家で。」
と、笑いながら伝えると
もぅ···と、言いながら
真っ赤になる紗英が愛しくてたまらない。
「さぁ、帰ろうか?」
「うん。あっ、佳英ちゃんとこに良い?」
「ああ、行こう。」
と、紗英の手を繋ぎ
紗英の手の甲にキスをして
歩き始める·····

「貴史。」と、亜也の声に
紗英が、俺を見たから
紗英に頷いて
「あっ、渡辺さん。
妻の紗英です。
紗英、前に話した女性だよ。」
と、言うと紗英も亜也も驚いた顔をした。

紗英は、亜也に頭を下げて
「楠木 紗英です。
あなたにも辛い思いがあるのでしょうが
あなたは、貴史ではない方を
選んだのですから
もう、貴史には会いに来ないで下さい。
貴史は、私が責任を持って
幸せにします。
あなたも、どうぞ、幸せな道を
見つけて下さい。」
と、言うともう一度頭を下げて
俺の手を引いた。

心から、嬉しかった。

そんな紗英がカッコ良くて
鼻の奥が、ツーンとしたから
紗英との繋いだ手をギュッと
強く握った。

歩みだす俺達に
「ありがとう···ございます。」
と、亜也の声が聞こえて
俺達は、お互いを見つめて
微笑んだ。

なにも言わずともわかり会える。
そんな紗英とこの先も
ずっと····一緒に。
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