カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
拒まれた理由







金曜日になり、菜々花さんと暮らし始めてから六日が経った。

昨夜は一緒に食事をしたが、彼女はなにか言いかけては「やっぱりなんでもないです」を繰り返し、様子がおかしかった。なんとなく、ぎこちないというか……。

俺は彼女を騙しているのではという意識が拭えず、自分から触れることは控えている。
この同居の機会をチャンスと捉えて好き勝手に手を出しては、彼女を囲い込んで追い詰めたも同然だ。

正当なやり方で愛を伝えているとは言い難い。

そんな負い目から、決して間違いを犯さないよう距離を保って自制しているのだが、ここ数日、彼女からも距離を置かれているような気がする。
次にキスを催促されたら手を出さない自信がないと不安を抱えていたが、その〝次〟というのがいっこうにやって来ないのだ。

それどころか、俺が残業を入れているせいで自宅で顔を合わせる時間も減り、職場での上司と部下の関係に戻りつつある。

この状況はほとんど俺のせいなのだが、俺が強制しなければ彼女はとくに要望を伝えてこないということは、やはり、この結婚自体に迷いがあるのだろうか。
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