隼世さんの車に乗せられた直後、私は泊まっているホテルに荷物を取りに行きたいと申し出たのだが、「ごめん。後で」となぜか断られてしまった。

ホテルを通り過ぎ、都内へ入り、やがて見覚えのある道を進む。

この道……たぶん、隼世さんのマンションへ行くつもりだ。

どうして?

「……は、隼世さん」

甘い予感がし、緊張を隠せないか細い声で名前を呼んだ。

おそらく赤信号にでもなれば目を見てなにか応えてくれたのだと思うが、あいにく青信号ばかりで、「うん」という謎の返事をされるだけでこれからの予定を詳しく話してもらえることはなかった。

短い時間を過ごした、彼のマンション。あそこで、したくてもできなかったことがたくさんある。

それを思うと、マンションへ近づくたび、私の胸は高鳴るのだった。