身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
4話「願い事は」





   4話「願い事は」






   ☆☆☆



 「もう落ち着いたか?」
 「…………取り乱してしまいすみませんでした」
 「気にするな」


 文月がようやく落ち着きを取り戻し、桜門に頭を下げる。初めて会った相手に泣き顔を見られてしまい、文月は怒っているとは言えど、さすがに恥ずかしく彼と目を合わせられなかった。
 すると、桜門の白い手がこちらに近づき、目元に触れた。が、あまりの冷たさに文月の体は大きく震えてしまった。


 「………っ…………!?」
 「悪かった。涙を拭こうとしたのだが、驚かせてしまった」
 「いえ………。あまりに冷たい手だったので」
 「あぁ。死人は冷たいからな」


 当たり前のようにそう言う桜門。
 やはり、彼は人ではない存在なのだ。だから、こんなにも冷たい。その冷たさを、文月は今でも覚えている。祖母が亡くなったときに手に触れ続けたが、ずっと冷たいままだった。むしろ、温かさを吸われているような気分にさえなった。どんなに吸われても祖母に温かさが戻ることはないというのに。


 「驚かないんだな」


 文月が驚かなかった変わりに、桜門がそれを驚いているようで、目を丸くしながらも楽しそうに笑っていた。それさえも面白いのだろう。



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