地味で根暗で電信柱な私だけど、二十代で結婚できますか?
 春の異動で理工書のフロアに移った。

 大学在学中にアルバイトをしていた大型書店にそのまま入射した私こと清川ゆかりは現在二十八歳。同期や友だちの中にはすでに結婚している人がいて少しばかりの焦りを感じていた。

 せめて二十代のうちにはと思っていてもなかなか良縁に恵まれなくてこれまでずっと独りでいる。

 二つ下の後輩の寿退社を知らされたのは今朝の話だ。

 相手とはどうやら高校のときからの付き合いだそうで、頼みもしないのにあれこれとノロケ話を聞かされた。

 私もあんなふうにノロケ話をしてみたい。

 だが、残念なことに私には彼氏のかの字もいなかった。

 電信柱と呼ばれたほど痩せっぽちで背の高い身長と可愛くも美人でもない自分の顔はコンプレックスでしかない。高校から大学に進学するときに黒縁眼鏡からコンタクトに替えたり、長い黒髪を切ってショートにしてみたりしたけれど中身が地味なままだったからか何の変化もなかった。

 結婚の報告をする後輩のきらきらした姿を思い出してしまい、私は書棚を整理する手を止めた。

 本来なら自分と無縁な分野の書籍が並ぶ棚は無遠慮なくらいそっけなく私を眺めているように見える。こんな本たちにも私は魅力的に映っていないのかもしれないと思うと悲しくなった。
 
 
 
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