一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
ピンチは猛反撃のタイミング
 密やかな声で目が覚めた。
 今日はヘルガさんのコンサートに行く日。

「もう起きる時間?」
 
 壮絶に眠い。
 なぜかというと、昨日がとっても充実していたから。

 *****

 朝一番、私たちは起きるなり、薬について意見をたたかわせた。
 有意義だったけれど、遅めの昼食の物色がてら新鮮な空気を吸いに出たら、初めて会った日のストリートピアノに目が吸い寄せられた。
 ピアノの椅子の高さをいそいそと調節するネイトを見て、ハタと気がつく。

「私、セッション出来ない……」

 初めて会った日と違って、私にはヴァイオリンがない。
 学校で副課として合唱やピアノを習ったけれど、聴かせられるレベルではない。
 けれどネイトに『一本指でもいいから、玲奈の好きに弾いてごらん。合わせるから』と言われて。
 お言葉に甘えて童謡を弾いたら、壮大な交響曲に仕立ててくれて、喝采を浴びた。

 ノリのいいお客さんに曲をリクエストされた。
 楽譜がなくて、私も練習したことがない曲。
 他のお客さんが歌ってくれて、アタリをつけた。
 ヴォイスパーカッションをやっている人や、カラオケでハモるのが得意な人も混ざって、大盛況。

 しまいには通りがかりの人にイベントをやってるのかと間違えられた。
 お昼を食べそこなってしまったけれど、私は大満足。それからデリを買って、二人で部屋で食べた。

 部屋こそホテルの最高の部屋だし、着るものもハイブランドのものばかりだけど。
 B級グルメに舌鼓を打つし、街中の散策を楽しんでいるネイト。
 意外に庶民派の彼をますます好きになる。
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