半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 改めて見上げてみれば、大きな岩は建物の三階に相当する。一度、ふわりと飛んで上から眺めてみると、横幅だってかなりあった。

「……これを飾り付けるくらいの草を、編むの?」
「だから言ったでしょう。集中力が続くのか心配だ、と」

 追ってアサギに言われたリリアは、ハッとして首をぷるぷると左右に振ると、近くまでふわふわ降りながら意気込みを告げる。

「やるわ! どうせできないだろうと踏んで、カマルに提案してきた狸親父を、ぎゃふんと言わせるために!」

 それを聞いたカマルが、ぶわっと感激の表情をした。

「姫様っ、俺のために!?」
「あなたの理解力も心配になりましたが、姫様、趣旨が変わっていますよ」

 そもそもリリアは、花かんむりを作るのも苦手である。

 カマルと「よっしゃやるわよ!」と男同士の友情でも築いたみたいに、熱く握手を交わす様子を眺めながら、アサギはやれやれと歎息した。

「まぁ、ぶちっと千切れなければ、形は歪でも構わないんですけどね」

 ――その直後、気持ちが高ぶったリリアの妖力が反応して、カマルが三度目の派手な放電を受けていた。
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