屋敷の敷地に戻ったのち、リリアたちは早速『逆さ草』があるという、庭の一つである広い原へと向かった。

「すっげぇ広いですね! さすが姫様のお屋敷です」

 人間の屋敷には近付かないでいるというカマルが、歩きながら「ほえー」と感心しきりで、きょろきょろしていた。

「元は馬を走らせるための場所でした。オウカ姫が、お腹の中にいる姫様のことを考えて、いずれ仔狐として走り回る頃に使えるようにと、旦那様と話し合って原にしたのです」
「そうなの、母様からの贈り物なのよ!」

 リリアは、アサギの横をふわふわと飛びながら、嬉しさいっぱいに笑った。長らく滞在できない母ではあるけれど、身ごもっていた当時の思い出も、だから屋敷中にたくさん溢れている。

 風邪が吹き抜けるたびに、さらさらと草が立てる心地良い音がする。

 アサギが中央で足を止めて、リリアも着地した。揃ってしゃがみ込む姿に気付いた使用人達が、屋敷の窓から、見慣れないカマルの姿に「一体何かしら?」と首を傾げる。