半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「頑張ってね」

 リリアは、カマルの背を押して、にこっと励ましの笑顔を送った。

 後押しされたカマルが「姫様っ」と感動する。しかしその直後、後ろのサイラスから発せられた極寒の眼差しに強張った。

 身震いした彼に、リリアがきょとんとする。その直後、カマルが慌てて大きな岩へ向き合う。

「俺っ、頑張ります!」

 意気込んだ直後、彼がポンッと狸姿に戻って、渾身の妖力をこめて両手で岩を叩いた。

 一瞬、大きな岩全体に薄い光が走った。

 あ、今なら全然軽いかも。リリアがそう直感した矢先、それを実際に触れている手に感じ取ったのか、カマルがくりくりとした目を期待で輝かせた。

 おそるおそる、といった感じで、カマルが自分の何十倍も大きな岩を、狸の小さな両前足で緊張気味に押した。

 その途端、まるで重さを感じないほど、あっけなく岩が転がった。

 不意に岩が、動いている途中でビクッと震えた。生きものみたいな反応だと思った直後には、ふっと視界から消え失せてしまっていた。

「え、どこに行ったのっ?」
「びっくりして目指めた拍子に、移動したんですよ。彼らは『重くなる』と『移動』に妖力が使えますから」

 そう答えたアサギの目が、押した姿勢のままでいる小さな狸の後ろ姿へ向く。
< 164 / 301 >

この作品をシェア

pagetop