半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「ひ、姫様に、結婚のご報告を、しようかと、思いまして」

 それで律儀に自分を探しにきたらしい。

 恐らくは、アサギから学院にいるとでも伝えられたのだろう。でもリリアとしては、本当にまさか、ここにカマルが来るとは思っていなかったから驚いた。

「ご、ごめんなさいカマル。ここ、随分遠いけど、どうやってきたの? 私みたいに飛ぶ手段はないんでしょう?」
「化け狸の妖怪国の道を使いました!」

 話している間に回復したのか、カマルが、今度は元気良く挙手して答えてきた。

 そういえば、どこからでも引き寄せられると言っていた。そう考えると、妖怪国の地理的に端寄りだという化け狸の住処は、意外と便利だ。

 その様子を、廊下の外側から観察していた令嬢令息達が、小さくざわついた。

「やっぱり狸が喋っている……」
「しかも器用に前足も上げて返事をしている」
「なんか、ちょっと可愛い気がしますわ……」
「動物と、意思疎通が……?」

 何人かの生徒達が、幼い頃のトキメキでも思い出しかのような、ドキドキした表情で胸を押さえた。
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