半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 今後は、婚約者として最低限のパートナー出席は求められる。

 エスコートされる義務はないし、一緒に待ち合わせての会場入りもしなくていい。ただ、同じ場所へ、招待された婚約者の一人として足を運ぶ。

 だが、敵地を知るためには必要なことだった。

 ――私は、逃げたりなんかしない。

「リリア、本当に大丈夫かい?」
「ええ、平気よ。父様、見ててちょうだい。私は誰にも負けないわ!」

 ツヴァイツァーは娘を心配したが、リリアは闘う気満々だった。

 十二歳で大泣きしたことはリリアの失態だった。大妖怪の母、そして伯爵の父が誇る娘として、誰にも負けてやらないと改めて強く決意したのだ。

 人間界に滅多に来られない母に、いつか胸を張ってこう自慢してやるつもりだった。

『おーっほほほほ! 人間なんて、私の敵じゃなかったわ!』

 ……みてろよ、あんのクソ王子め。

 婚約の期日は、リリアが十六歳を迎えるまでだ。彼女は、誕生日を迎えたら即、サイラスに恥をかかせつつの、婚約破棄を叩き付けてやるつもりでいた。
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