恋する少女漫画家
片想いなんてしたくない

2限目は国際金融論の講義。

大勢の受講生がひしめく広い広い講義室。
はるか前方で、教授が黒板に、なにやら必死に書きなぐっている。

この退屈な時間を利用して、次回作のストーリーを考えよう。
あたしは白紙のルーズリーフと向かい合う。


あたし、高宮江奈。18歳。


大学に通うかたわら、世の乙女たちに甘い甘いラブストーリーを提供する、少女漫画家でもある。

半年前にデビューしたばかりで、まだまだひよっこ作家。壁にぶちあたっては、漫画と格闘する日々。


幼い頃から、物語を読むことも絵を描くことも大好きだったけれど、まさか将来、自分が漫画家になるなんて、全く想像もしていなかった。


あたしの夢は、何かを創り出す人になることだった。


そういう特別な職業に就くんだと、心に決めていた。


あたり前のようにOLになって、結婚して、専業主婦になって、そういうごくありふれた普通のストーリーには、まるで興味がなかった。


とにかくあたしは、平凡という言葉が、大嫌いだった。


だから、相変わらずな日常を、いかに楽しく過ごすか、いかに特別な時間にするかが、あたしにとって人生最大のテーマなんだ。
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