恋する少女漫画家

7号館の1階にある学食に足を踏み入れると、そこは相変わらず学生たちで混雑していた。

この7号館の学食は、大学校内にいくつか設けてある学食の中で、最もフロア面積が広く、メニューも多彩。

縦長い白いテーブルが列をなして無数に並べられているフロアは、各サークルごとに集まる場所が、ある程度決まっている。いわゆる、たまり場のようなもの。


あたしと礼子が所属している温泉同好会は、図書館側の扉から入ってすぐの一角。


談笑しながら昼食をとっているサークルメンバーに、あたしたちはひと通り挨拶を済ませると、空いているイスにカバンを置き、財布片手に注文カウンターへ向かう。


「さっきの話の続きだけど」と、礼子が口を開く。

「江奈は劇的な出逢いを求めすぎなんだよ。例えば、男友達とかサークルの先輩とか、そういう間柄からいつしか恋が芽生え、時間をかけて恋愛に発展するってパターンだって、あるわけじゃん?」


礼子にそう諭され、あたしの脳裏に、1人の男性の顔がよぎった。


ハッとして、自らそれを打ち消すように、言葉を発する。
< 4 / 12 >

この作品をシェア

pagetop