覚醒者3号-最終調査報告-
第四章

その5人は私達の前に出現するなり、棒立ちのまま動かない。

無防備にも程がある。

あんなに隙だらけなら、能力を駆使しなくても打ち込めそうなほどだった。

なのに。

「……」

私は勿論、攻撃の手段を持つななみちゃんも、小山田君すらも。

あの5人には接近する事すらできなかった。

隙はあっても、彼らから発散される気配が、私達の足を止めていた。

…たとえ大人しく寝そべっていても、野生の虎に近づく人はいない。

それと同じ事だ。

その場から動かなくても感じ取れる、圧倒的なまでの『危険』。

それが、その5人からは発散されていた。

やがて。

「!」

5人が5人とも。

寸分狂わぬ動作を起こした。

拘束衣の腰の後ろ。

ナイフケースに収納されていた、刃渡り30センチほどのサバイバルナイフを二本。

5人は左右の手にそのナイフを握っていた。

「くるぞ…黛さん、ななみ、油断するな」

噛み殺すような声で小山田君が言った。


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