没落人生から脱出します!
リーディエの一本道
 リーディエは生まれたときからカレルの街にいる。母とのふたり暮らしで、父親の顔は知らない。母の話だと、父は名のある貴族だったらしい。当時、貴族の館で下働きをしていた母は、彼に見初められ、リーディエを身ごもった。しかし当然、結婚が許されることはなく、母は大きなお腹のまま屋敷を追い出され、平民街でリーディエを産んだ。

 母はリーディエを愛してくれたが、父について詳しく教えてくれることはなかった。
 幼いリーディエは、漠然といつか父親が迎えに来てくれると信じていたし、父が貴族だと知ってからは、自分もキラキラしたドレスを纏い、お姫様のような生活ができるのだと思い込んでいた。
 けれど成長するにつれ、自分たちは捨てられたのだと分かってくる。

(父は、いたずらにお母さんをもてあそんだだけで、娘の存在なんて気にもしていないのよ。ただの一度も会いに来ないのは、私を愛していないから)

 いじけるようにそう思う一方、期待も捨てられなかった。

(でもいつか、私を捜しに来てくれるかもしれない。今まですまなかったと言って、抱きしめてくれるかもしれない。お母さんが貴族じゃないから別れさせられただけで、ふたりの間には愛があったのかもしれない)

 リーディエは、自分がいらない子だとは思いたくなかった。傍にいてくれなくても、生まれたことを喜んでほしかったし、たった一度でもいいから、会いたかったと抱きしめて欲しかった。
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