かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました



黒田淳一は、私が初めて、そして唯一、付き合った男だ。
中学三年生の頃に告白され、陸からの強い後押しもあり、うなずいた。

ふたつ年上の黒田は元々は陸の友達だった。
女性関係であまりよくない噂はあったみたいだけど、体の弱かった陸をいつも助けてくれたり庇ってくれたりしていたから、私自身としてはそこまでマイナスなイメージはなかった。

『お、相沢妹。今、陸のこと送り届けたところなんだけどさ。相沢妹、お礼に今度デートしてよ』
『嫌です』
『ハッキリ言うなぁ。あ、敬語いいよ。名前もさ〝淳一〟って呼んでくれていいから、俺も〝澪〟って呼んでいい?』

陸の調子が悪い時にはよく家まで送ってきていたし、陸から聞かされた話によると学校でもよく面倒を焼いてくれているらしかった。

同じ中学に通っている頃は、当たり前のように陸に手を貸せていたけれど、陸の学年は私より二学年上。当然、中学と高校で学校は離れ離れになった。

その頃には陸の体力もだいぶついてきてはいたものの、それでもきちんと学校生活がおくれているのかとハラハラしていた私にとっては、いつの間にか黒田はそこそこ頼りになる存在になっていた。

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