かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました



「私、昔は今より熱かったんです」と話し出しても、桐島さんは驚かなかった。

今の私からは〝熱い私〟は想像もつかないだろうと思うのに……と不思議に思っていると、そんな私に気付いた桐島さんは笑みをこぼした。

「陸がああだからね。陸と同じ遺伝子を持っている相沢さんが熱くてもおかしくはないと思って。でも、意外だね」

そういうわけか、と納得する。たしかに、熱い陸を知っていればそこまで驚きはしないのかもしれない。

桐島さんの前にはウーロンハイが、私の前には巨峰サワーが置かれている。桐島さんが三杯目、私が二杯目だ。

「熱かったって、陸みたいに?」と聞かれる。

「そう……なのかな。熱かったっていっても、もちろん、軸の部分は今のままですけど、こう……もう少し正義感が丸出しだったというか。今だったらスルーするようなことも見逃せなくて、自分からどんどん割り込んでいくような子供だったんです」

「本当に陸みたいだな」という、桐島さんのぼそりとした声に笑う。

「私がそうなったのも陸が原因なんです。なにかいざこざが起こるたびに先頭に立つ陸を庇ううちに、そういうクセがついちゃったみたいで」
「ああ、陸の体が弱かったから?」
「そうです。体育の授業も休みながらじゃないときついくらいだったのに、いじめっこ相手にどんどん行くから……幼稚園の頃からそうだったので、いつの間にか陸を庇うのが当然になってて、そのクセは陸以外にも出るようになってて」

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