―― 一章 単細胞も歩けば鬼眼鏡に当たる




 たった今、お見合いが破断となってしまった私の名前は、竹本 結花(たけもとゆいか)、二十四歳。

 日本屈指の巨大企業、タケモトホールディングスの会長・竹本 一郎(たけもといちろう)のひとり娘であり、自分でいうのもなんだけど、ものすっっごく裕福な家のお嬢様だ。

 そんな私は、ひと月前からグループ企業の御曹司とのお見合いが決まっていた。これはいわゆる政略結婚と似たようなもので。

 ひとり娘の私に、自分の見初めた男と結婚をさせたいという過保護な父の思惑。もちろん自分の認めた相手に、タケモトを継いでもらいたいという魂胆もあるだろう。

 私の方もこれまでそのつもりで生きてきたし、結婚してから旦那さまと距離を縮めていけばいいと思っていた。
 
 相手側からすれば、父の企業も手に入る訳だし。これ以上いい話はなのはずなのだが⋯⋯。

 まさかこんなことになるだなんて、予想もしていなかった。