地味で根暗で電信柱な私だけど、甘いキスをしてくれますか?
 宿り木の下ではキスを拒んではいけない。



 私こと清川ゆかりの勤める書店ではフロア毎にクリスマスの宿り木を飾る。どれもそんなに大きくないけど飾り付けをするときは気分が浮き立つものだ。これはこの書店で働き始めた大学生バイト時代の頃から変わらない。

「ゆかりさん知ってますぅ?」

 脚立の一番上に立ち、壁から天井へクリスマスフェア用の電飾のコードを伸ばしながら後輩の長野ちゃんが訊いてきた。

 六つ年下の長野ちゃんはまだ社会人一年生。栗色の髪をショートボブにしたお目々くりくりの可愛い子である。

 一八五センチの電信柱な私と違って一五四センチの彼女は高校生と言っても通じそうなくらい愛らしい。声も何だかキャピキャピしていてこの娘はきっとモテるんだろうなぁと羨ましくさえなる。

「宿り木の下ではキスを拒んじゃ駄目なんですよぉ」
「そうなの?」

 私はその宿り木にオーナメントを飾っている。一番上にも手が届くので天辺にお星様を付けるときも脚立を必要としない。とはいえ、こんな利点は可愛げの足しにはならないのだけど。

「もし拒んじゃったりしたらぁ」

 長野ちゃんが脚立からぴょんと飛び降りた。おぉ、若い。さすが社会人一年生。
 
 
 
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