翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「小降りだし、傘はひとつでいいよな」


「うっ、うん」


空を見上げた翔ちゃんに手を引かれて、傘の中にエスコートされる。


私、ほんとに彼の隣にいるんだよね?
翔ちゃんがすぐそばにいることを、ちゃんと確かめたくなった。


今ふたりが手と手で繋がっていることは奇跡なんだと、しっかり自分に言い聞かせた。


外は夏の夜。
静かに雨が降ってる。


それは私達にとってはたぶん真夜中というもので、そんな時間に一緒に出掛けるなんてそれだけでドキドキする。


ふたりの頭上で跳ねる雨音が、やけにうるさいこの胸の音を隠してくれますように。
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