無口な彼の熾烈な想い

エピローグ

「鈴先生、お待たせ・・・ってなんか空気が重くない?」

ヘラヘラ笑う惣太郎に絢斗が般若の顔でにらみをきかせる。

「えっ?せ、瀬口さん、僕、何かしましたかね?」

いや、惣太郎はまだ、何もしていない(と思いたい)。

だが、鈴の好意を知って彼女の計画に乗るのならどうなるかはわからない(そんなのわかりきっている)。

潰せる芽は潰せるうちに潰しておくに限る(それしかない)。

「゛ソウくん゛鈴は俺のだ」

「「へっ?」」

突然の俺のもの宣言に、鈴と惣太郎の驚いた声が重なる。

「こいつのことは本日正式に俺がもらい受けた。゛ソウくん゛には悪いが、鈴は誰にも渡さない」

「「キャー🖤」」

今度は、礼治と総子が抱き合いながら、思わず上げた奇声が重なった。

鈴の肩を抱き寄せ、ガルルと牽制する絢斗の姿は、敵に牙をむいた狼のように見える。

下からチョビビが同じような顔をして絢斗を見上げている姿がシュールだ。

「ちょっ、絢斗ったら恥ずかしい。公衆の面前で変な断罪イベント発生とか・・・ホントやめてよね」

ブツブツと呟く鈴は真っ赤だ。

「鈴こそどういうつもりだ。俺のことを受け入れておきながら今さら他の男のところに行くとか、許せるわけはないだろう」

「・・・ホント、ヤメテ。モエコロスキデスカ」

とうとう両手で顔を覆ってしまった鈴の言葉は片言過ぎて絢斗には聞き取れない。

「俺はお前のそばにいたい。その場所を誰にも譲る気はないんだ。たとえそれが動物であっても」

「ソ、ソウデスカ。シリマセンデシタ」

「それが鈴の初恋の゛ソウくん゛だって例外じゃない。悪いが諦めてほしい。鈴は俺の嫁にする」

「いや~ん!プロポーズよ。やったわね。鈴先生、素敵な誕生日ね!おめでとう!」

絢斗が鈴を抱き締めた瞬間、大喜びで拍手する河上夫妻は同時に立ち上がった。

訳がわからずキョトンとする惣太郎とチョビビ&動物達。

「いや、諦めるも何も俺彼女いるし」

と、後ろに隠れていた女の子を指差して顔をひきつらせる惣太郎は、ただの巻き込まれたモブだった。

そして、ペコリと照れ臭そうに頭を下げつつ顔を出す女の子を見て絢斗は全てを理解した。

絢斗はまんまと河上夫妻に嵌められたのだと。
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