無口な彼の熾烈な想い

天才シェフ・ド・キュイジーヌ(料理長)

「わたくしたちの身内が大変ご迷惑をおかけしました。家族を代表して謝罪致します。すみませんでした」

嵐のように現れて去っていった彩月に、言葉を失って黙り込んでいた絢斗と鈴の前に間髪おかずに謝罪に現れたのは、絢斗の師匠で綾香の夫のルイだった。

「はじめまして。綾香の夫で、当レストランの総料理長を務めます関口ルイです。絢斗共々お見知りおきを」

そうやって優雅にお辞儀をするルイは、流暢な日本語とは裏腹にザ外国人といった金髪碧眼の美しい男性だ。

「こちらこそ挨拶が遅れて申し訳ありません。獣医師をやっている平野鈴です。アニマルカフェについてはお力になれそうもなくてすみません。お母様の件につきましてはあの方の自己責任でしょうから関口さんが気にされることではありません」

椅子から立ち上がって挨拶を返す鈴に、ルイは極上の笑顔を返してくれた。

゛ま、眩しい~゛

日陰のモヤシのような生活を送ってきた鈴には、ザ王子様といった風貌のルイは眩しすぎた。

思わず目の前に手を翳して眩しさを回避しそうになった鈴だったが、それはあまりにもお洒落なカフェには不釣り合いな行動だったので必死に思いとどまった。

「そう言って頂けて安心致しました。アニマルカフェについては、私も鈴先生と同意見でしたので問題ありません」

「ですよね~。そこまで動物に思い入れがない人にアニマルカフェなんて無理がありすぎですから。関口さんもそのような考えでしたのなら良かった」

あっけらかんとした鈴の態度に、思わずルイの笑みが深くなる。

イケメンしかもザ外国人王子様顔のルイを見ても全く動じないどころか、ニュートラルなで自然な鈴の態度にルイも好感を覚えずにはいられなかった。

「どうぞルイとお呼び下さい。綾香も花菜も関口で紛らわしいでしょうから」

無駄に(無意識に)キラキラオーラを撒き散らす王子を見て、鈴はこのところ放置している乙女ゲームを思い出した。

鈴が攻略対象としたのは、言わずと知れたツンデレ傷心系ワンコキャラ。

他にも俺様王子様とか、S系執事とか、堅物騎士とか、ヤンデレ教師とか色々な攻略キャラがいるのだが、一番簡単で攻略しやすいルートは俺様王子様ルート・・・定番で笑う。

ツンデレ傷心系ワンコキャラルートに乗っかろうと努力するのに、意図せずキラキラ俺様王子を呼び寄せてしまう。

リアルなこの世界ではルイは綾香と結婚しているし、決して俺様王子様キャラではないので安心だが・・・。

゛そういえばここ一週間、ログイン報酬を得るためだけにアプリを立ち上げ即ログオフを繰り返していたな゛

得意の妄想癖が発動した鈴に、周囲はまだ気付いていない。

さぞかし推しの好感度はがた落ちしているだろうな、と鈴は遠い目をして苦笑したのだが、そんなこととは露知らずの絢斗は、鈴に呆れられてしまったのではないかと不安にかられるのであった。

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