離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
懐かしい味
 レジでお客さんの会計を終え、店をあとにするうしろ姿を見届けた私は、カフェの制服である薄いブルーのシャツの袖を軽くまくり直した。

 キッチンダスターでカウンターをさっと拭き、カウンターの外に出る。

 レジの横にはケーキが入ったショーケースがあり、その前にはクッキーやフィナンシェなどの焼き菓子も数多く並んでいた。

 どれももともと洋菓子店でパティシエとして働いていた、ここ『ダンルジャルダン』の店長お手製のもので、袋にはお花をモチーフにした店のロゴマークがプリントされている。

 企業ビルの一階に入っているので、来店されるのは会社員の人ばかりと思いきや、同じくらいこの焼き菓子を求めて店を訪れる一般のお客さんも多かった。

 私は減っている焼き菓子をブラウンの腰巻きエプロンから取り出したメモに記入し、在庫を補充していく。

 もうすぐお昼になるからエスプレッソマシーンも一度確認しておかないとな。

 そう思いカウンターの中へ戻った直後、入店を知らせるドアベルの音がして、私はドアのほうへ顔を向けた。
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