奥手な二人の両片思い
水族館デート
怜也side



「え! ブリって大きさで名前が違うの⁉」



中間テストが終わって帰宅し、スマホと魚図鑑を開いて、ノートにブリの説明を書き込む。



「へぇ、出世魚って言うんだ。めでたい名前だなぁ~」



何をやっているのかというと、綿原さんとの水族館デートのために魚の勉強をしている。

本当はあまり魚に詳しくないんだけど、動物園は外を歩くから暑いし、ショッピングモールは連れ回したり待たせてしまうかもしれないと思って、水族館にしたんだ。



「うわぁ……アシカの仲間ってこんなにいるんだ……」



今度はアシカのページを開いたものの、全部同じに見える。

トドの隣に、国の名前みたいな、オタリアって生き物がいるんだけど……これ、どこが違うの?



「だぁぁぁ~! 全然わかんねぇ~!」



そういや俺、一度も水族館行ったことないや。
中の雰囲気とかどうなってんだろ。



「隼も清花ちゃんも、今日遊びに行ってるしな……」



スマホを開いて姉にメッセージを送る。



【水族館ってどんな感じ?】

【何急に】

【友達と遊びに行くんだけど行ったことないから分かんなくって】

【男同士なら気にする必要なくね?】

【いや。女友達と】

【は? デート? 傷心中の姉の心をえぐる気?】



「しまった……」



遊びの邪魔になるかと思ってみゆ姉に聞いてみたけれど……どうやら地雷を踏んでしまったようだ。
< 30 / 144 >

この作品をシェア

pagetop