奥手な二人の両片思い
波乱の文化祭
仮装イベントが終わった11月。

学校は一気に文化祭モードに。

今月に入ってから生徒達は、昼休みと放課後の時間を利用し、少しずつ準備を始めた。



「首からかけるタイプか、手に持つタイプか、どっちにする?」



現在、放課後の教室で、クラスメイト達と看板作成の会議をしている。

店の外に置くのと宣伝用の、2パターン作るのを任されたんだ。



「出張販売するなら首からかけるほうが良さそうだけど、私達はしないから、手に持つタイプのほうがいいんじゃない?」

「確かに。遠くからでも見えやすいし」

「じゃあそれで決定しようか」



意見がまとまり、デザインの話へ。



「一目でケーキ屋だってわかるように、ケーキの形にしてみるのはどう?」

「いいねそれ! せっかくなら売ってるケーキの形にしようよ」

「そうだね。明日先生に聞いてみるよ」



会話でわかる通り、私達のクラスがやるのはケーキ屋。出店場所は中庭のド真ん中だ。

「完売を目指そう!」と団結したところで、今日は解散。


派手にすれば目に止まりそうだけど、その分色塗りが大変なんだよね。



「あ、綿原さん!」

「えっ……⁉」



ぼんやりイメージしながら昇降口に向かっていると、なぜか上川くんが待っていた。



「今日は居残りしないって言ってなかった?」

「うん。でも毎日登下校するって約束したし」



話によると、私が来るまでずっと待っていたらしい。

自分だけが居残りの時、私だけ先に帰していたのは、女性を夜遅くまで待たせたくなかったからなんだって。
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