「……浮いてるね」
浮いている、というより、仲間はずれにされている、という方が正しいのだろう。部活中は、いつも一人でいることが多い。淡々と仕事をこなしている。時々、背の高い部員と一緒にいるところを見かけるけれど、彼女はだいたいひとりだった。
女子バスケ部と、男子バスケ部のコートは隣同士なので、ついつい目が男子バスケ部のほうにいってしまう。
「りかが、あの子のことウザいって言ってた。確かにウザそうだよね、なんか無愛想じゃない? 生意気そうだし」
知りもしないのに、よく言う。いや、逆だ。知らないから、笑って確証もないことを言えるのだろう。それで、言ってすぐに自分が言ったことなんてすっかり忘れるのだ。
人間がそういう生き物だということは、17歳になれば、もう十分すぎるほど知っていた。
男子バスケ部のマネージャーは、りかとこころと彼女の三人だ。大抵りかとこころは二人で行動している。二人が、彼女と話しているところは、ここ最近では一度も見ていない。同じチームのマネージャーなのに彼女たちの間に亀裂が入ってしまっていることは、部外者の私から見ても明らかだった。
「なんで、ああいう状況でマネ続けられるんだろうね。鈍感なのかなぁ、あの子」
辞めればいいのに、そう付け足して汗を拭う。所詮他人ごとであれば歌でも歌うようにそう言ってのけることができるのだ。
柚子が壁によりかかってしゃがんだから、私も同じように座り込む。私たちの視線の先で、彼女は部員のタオルの整理をはじめていた。りかとこころは、部員と楽しそうに喋っている。
「鈍感じゃないと思う。敏感だよ。自分がハブられてることは気づいてるでしょ。それでも辞めないのは、理由があるんだと思うけど」
もっと別の何か。
りかやこころみたいな先輩と仲が悪くても、彼女をあの場所にいさせるもの。その正体は分からないけれど、できる限り大きくあってほしいと思う。過去に願うようにそう思う行為は、自分の後悔を慰めるのと少し似ている。