(四)




人が恋に落ちる音があるとするならば、恐らく俺のは、フリースローの静けさの中で鳴ったゴールネットのシュバッ、という音だ。

可憐にゴールをきめて、汗を拭う。その姿から目を離せなくなった。これを恋と結論づけるには、ひどく陳腐であったけれど、中学一年生のまだ声変わりもしていなかったあの瞬間に、俺は自分の初恋を自覚した。



「いつからバスケやってるの?」
「小学一年生の時から」
「好きなの?」
「そんなの、当たり前じゃん」
「なんでそんなにうまいの?」
「天才だからだよ。それと、バスケが好きで好きで、仕方がないからだ」



自分でそう言って、屈託なく笑った顔が、好きだと思った。

コートの中で、獣みたいに尖る瞳も好きだった。何より、彼女のプレーが好きだった。才能に惹かれていた。

なんとか話せる仲にまでこぎ着け、冗談を言い合い、時々悩みを打ち明けられるくらいにまで関係を深めた。別に、付き合いたいとかそういう願望があるわけではなかった。ただ、彼女にはずっと好きで、好きで、仕方のないバスケをしていてほしかった。


シュートを打った後の指先とか、フェイントをするときの身体の動きとか、奇想天外なパスを繰り出す時に微かにあがる口角とか、そういうものをずっと見ていたかった。




俺は、林円花がバスケをしている姿に、ずっと惹かれていたかったのだと思う。