地味で根暗で電信柱な私だけど、ちゃんと守ってくれますか?
 お昼のピークが過ぎたころ、階段口からカジュアルなスーツ姿の男の人が現れた。

 彼はレジカウンターに一度目をやってから雑誌の置かれた平台へと足を向ける。物色するように雑誌を眺めてからまたレジカウンターに視線を投げてきた。

「すみません」

 野太い声で男の人は私にたずねてきた。

「『ウインドウズの友』の最新号はありませんか?」
「あ、それでしたら」

 その本はすでに平台ではなく棚差し扱いになっていた。

 私はすぐに件の本がある棚を案内し、男の人は目当ての物を見つけた。

 他に欲しいものはなかったようでレジにて精算する。

 レジ処理をする私を彼はじいっと見つめていた。何だろう、と引っかかりを抱きつつ彼の希望でレジ袋に入れる。

 どこか絡みつくような視線に落ち着かなくなりながら私は本の入ったレジ袋を彼に手渡した。

「あの」

 男の人が私の左手を見る。何かを気にしているようでもあった。

 特に手荒れとかないんだけどなぁ。

 冷え性だけど。

「もしかして、清川?」
「はい?」

 思わず頓狂な声が出た。

 目をパチパチさせていると彼は確信を得たと言わんばかりに大きくうなずく。

「やっぱりそうだ。俺だよ、高校の同級生だった桜井」
「高校の?」

 すぐにはわからなかった。

 しばし彼を見つめ、脳内で高速検索する。
 
 
 
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