翔んでアルミナリア
エピローグ


———・・・体に水平感覚があった。なにかに包まれている感触。

ああ、寝袋の中かと寝ぼけた頭のすみで思う。
今日で何日目だっけ…もぞもぞと身じろぎ、窮屈さがないことに違和感をおぼえた。

やたらと重いまぶたをこじ開けようと試みる。

「「実花子!!」」
うるさいくらいの男女の二重奏。ひどく懐かしいその声を聞きながら、わたしのこのあたりの記憶は途切れ途切れになっている。
このあとまた意識を失ってしまったようなのだ。

両親の「実花子! 実花子!」の連呼は止むことがなく、正直『静かにしてほしい…』と思ってしまったのは反抗期に免じて許してほしい。

そんなこんなを繰り返すうちに、ようやくわたしの意識は鮮明になり、目を開けて体を動かすことができるようになった。
見覚えのない狭い部屋と、ベッドの脇にはこちらを心配そうに覗きこむ両親の顔。
どうやら病院にいるみたいだ。

涙を浮かべてわたしの意識の回復を喜ぶ両親に、とるもとりあえず「蓮くんは!?」と半身を起こしてのめるように訊いた。
わたしの剣幕に戸惑いながら、隣の病室にいると母が教えてくれる。
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