「……苦手」

 アルベール様が、私の言葉を復唱する。うん、私は大の苦手なんです。でも、そうは言えなかった。だって、追い打ちをかけることになるから。今のアルベール様は心の奥底からショックだとでもいうように、今にも泣きだしそうな表情になられていたから。いや「冷血貴公子」の面影がゼロですよ。どこに行ったの、面影。そう突っ込もうかと思ったけれど、それもやめた。するだけ無駄だ。

「シュゼット嬢は、やっぱり俺のことを捨てる気なんですね……!」

 そして、そのお言葉だった。いや、何度も言っているじゃないですか。捨てられるのは私だって。そう告げるけれど、アルベール様は聞く耳を持たない。さらには私のドレスを相変わらず掴んで離さない。もうここまで来れば根性を通り越して執念だ。逃げるに逃げられないじゃないか。

「ですから、捨てるとか捨てないとかそう言うことじゃなくて……あぁ、もうっ!」

 このままだと埒が明かない。だった、もうさっさと納得してもらうしかないじゃない。そして、アルベール様側の説明もきちんと聞く。そのうえで私が折れるか、アルベール様が折れるかの仁義なき戦いが始まるのだ。……とにかく、まずはアルベール様の主張を聞こう。じゃないと、何も始まらない。

「わかりました、わかりましたよ! じゃあ、アルベール様があんな態度を私に取っていた理由を教えていただけませんか!?」

 私がそう言ってアルベール様に詰め寄れば、アルベール様は私から露骨に視線を逸らされる。その頬は少しばかり赤くなっており、なんだか意外だった。……もしかしてだけれど、照れているのだろうか? 今の言葉のどこに照れる要素があったのかはわからないけれど。

「え、えっと……じゃあ、まずは何処から……」
「……私が質問をするので、それに答えていただければ」

 この人に長々と話をさせると分かりにくい気がする。そう思ったので、私が問いかけたことに対して回答するという方法を取ることを提案した。すると、アルベール様は静かに頷かれる。どうやら、納得してくださったようだ。