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「あっ、お嬢様。おかえりなさいま……せ」

 私が自室に入ると、私の専属侍女であるエスメーが私の姿を見て瞳を丸くする。そりゃそうだ。今の私は誰と戦ってきたんだと言われそうな程ボロボロなのだ。ドレスはしわくちゃだし、髪の毛は綺麗にセットされていた面影もない。嵐の中に突っ込んできたのか、と言われてもおかしくなかった。正直に言えば、こうなることは私も予想外だった。

「お、お嬢様!? 本日は婚約者様とのお茶会だったのでは……? 何故、そんな戦場に出向いたような格好に……」
「えぇ、本日は確かにアルベール様と二人きりのお茶会の日だったわ……」

 遠い目をしながら、私はそうエスメーに言う。そりゃあ、エスメーも普通に私がアルベール様とお茶とお話だけをして帰ってくると思うだろう。誰も嵐の中に突っ込みに行ったり、戦場に出向くなんて思うわけがない。

「え、えっと……はっ、まさか、婚約者様に乱暴されて……!?」
「違う違う! ……いや、ある意味違わないけれど……」

 最後の方は、自分にしか聞こえないぐらいの音量だった。多分、エスメーの想像する乱暴とは既成事実を作ろうとしたとか、暴力とかそう言うことだろう。私がされた行為は乱暴と言えば乱暴かもしれないけれど、そう言うことじゃない。……あの行為は――……。

「いや、単に大きな赤子をあやしていただけ……だと思うわ」

 そう、あれは大きな子供の面倒を見ていただけなのだ。ドレスを掴まれて、離れるのを拒否された。その理由はアルベール様曰く、「もういっそ一緒に住みたい!」ということだった。いや、いろいろとぶっ飛んでいる。それだけならばまだしも、お姫様抱っこをされて屋敷の中に運ばれそうになったのには本気で焦った。あそこで逃げていなければ、私は間違いなく監禁されていただろう。あの瞳は、本気だった。今思い出しても震えてしまいそう。