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「え、えっと、あの、その……」

 アルベール様のその声には、明らかな戸惑いが含まれている。こんなにも感情を露わにしてくださったのは、初めてかもしれないなぁ。そう思いながら、私は自分の胸に手を当てて自分の本音をアルベール様に伝える。

「アルベール様。私、知っておりますの。アルベール様が私との婚約に不満を抱いていることぐらい」
「……えっと」
「あれだけ態度に示されたら、いくら鈍い鈍いと言われる私でもわかってしまいます。アルベール様は――私と婚約が不満なのでしょう?」

 私がそうアルベール様に問いかければ、アルベール様の視線が下に向く。あぁ、図星ってところか。そうよね。この婚約は奇跡に近い。名門侯爵家と末端子爵家の婚約など、普通に考えて釣り合わないのだ。子爵家の方が相当な美貌の持ち主、とかだったら釣り合うのかな。いや、私じゃ無理だけれど。

「……俺の、どの態度が、そう思わせたんですか……?」

 あぁ、こんな風にまともにお話をしたのも初めてかもしれないな。そう思いながら、私は考える。一つ一つ上げていけば間違いなくキリがない。だから、いくつかをピックアップして伝えるしかないだろう。

「そうですね……まずは、私とはろくに会話を交わしてくださらないこと。それから、睨みつけるように見つめられたこと。かと思えば話すときはほとんど視線を合わせてくださらないこと。あとは――」
「――もう、やめてください」

 私の言葉に、アルベール様は制止をかける。どうやら、私の気持ちはわかってくださったようだ。そう思ってホッとしたのもつかの間。アルベール様はおもむろに椅子から立ち上がると、私の方に一歩一歩近づいてこられる。……あれ? もしかしてだけれど、怒らせてしまっただろうか? ……アルベール様「冷血貴公子」なんて呼ばれているけれど、それはただの噂……だよね? 今になって、恐ろしくなってきてしまう。