「俺はシュゼット嬢が好きです! シュゼット嬢一筋です! シュゼット嬢のことしか眼中にないんです!」
「わ、分かりました、分かりましたから一旦落ち着いてくださいませ……!」

 今にも泣きだしそうなアルベール様を宥めながら、私はそんなことを言う。そして、ゆっくりと落ち着き始めたアルベール様を私から引き離して、私はホッと一息をついた。アルベール様は私から引き離されたものの、私のドレスを握って「捨てないで……!」と告げてこられる。……いや、普通に考えれば捨てられるのは私の方ですよね? 立場的に考えて。

「……いや、アルベール様。捨てられるのは私の方ですよね、立場的に考えて」

 身分もアルベール様の方が上だし、容姿の良さもアルベール様の方が上。将来有望なのもアルベール様。もうここまで揃ったら私がアルベール様に勝てる要素はない。だから、普通に考えたら「捨てないで!」と言って縋るのは私のはずなのだ。……決して、アルベール様が言うことじゃない。

「いえ! 俺はシュゼット嬢を捨てるなんて考えたこともないんです! 捨てられるのは俺の方だって、常々危機感がありましたから……」

 しょぼくれたようにそうおっしゃるアルベール様に、不意に胸がときめいた。って、いや、なんで今更? そう思ったけれど、私の前でアルベール様がこんなにも感情を露わにしてくださったのは初めてだ。だからだろう。そう自分に言い聞かせて、納得させる。と言いますか、私に捨てられる危機感があったんですか。そうですか。私、どれだけ極悪非道な女だと思われていたのでしょうか?