「私、アルベール様を捨てようなんて思ったこと一度もないんですけれど……。なんで、そんな発想に……」
「だって、シュゼット嬢はとてもお美しいじゃないですか! 俺なんかじゃ足元にも及ばないぐらいですから、いずれは容姿の良い男性の元に行くんだって思っていて……」
「いやいやいや! ご自分のお顔きちんと見てくださいよ! とってもお美しいですよ!?」

 私はアルベール様に勢いよく詰め寄ってそう言う。未だに私のドレスを掴んで離さないのはさすがだと思う。しかし、こんなところで根性を発揮しないでいただきたい。それが切実な本音だった。

「それに、身分的に考えてアルベール様の方が上じゃないですか。私が捨てるなんてそんな図々しいこと出来ません」
「今、婚約の解消を頼んできたじゃないですか……」
「それは、アルベール様が私との婚約を不満に思っていらっしゃると思っていたからで……」
「それでも一緒なんです!」

 アルベール様は私にそのお綺麗なお顔をグッと近づけて、そんなことをおっしゃる。いや、この場合も捨てられるのはやっぱりアルベール様じゃなくて私ですよね? そう言いたかったけれど、声にはならなかった。

「だって、俺の周りの男性はすごく顔の良い奴ばかりんですよ!? あんなの見たら、俺の顔が綺麗だなんて思えるわけないじゃないですか!」
「いや、アルベール様も負けていませんよ……」

 そりゃあ、ね? アルベール様が同性のご友人として関わっていらっしゃるご令息方は、それはそれはお美しい人ばかりだ。儚げな美形に、凛々しい美形。女性にも見間違える美形等々。でも、一番男らしくてかっこいいのはアルベール様だと私は思っているんですよ? うん、私大して美形に興味はないけれど。