今日は卒業式だ。今日は両親と一緒に車で登校する。私は高校の入学式の時に買ってもらったベストを着ていた。お母様は新しいものになさいと言ったけれど、私はこれが良かった。綱と色違いのベストだ。高等部に入ってからあまり身長の伸びていない私は、まだまだ着れる。あの頃は二人で並ぶことも両親は喜んでいてくれていた。

 学院につけば、ピロティに張り出してある大学合格者の掲示板の周囲には三年生の生徒とともに父兄が集まっていた。私たちもその中に混ざる。やはり話題は綱だ。生駒と綱はまだ学院についていないようだった。きっと電車で来るのだろう。

「さすがですね、生駒くん」

 話しかけてきたのは枡さんのお父様だ。枡さんの後ろには奥様らしい方が控えめに立っている。

「S大では留学生の面接はその国の卒業生が当たることになっていて、今年の面接官は私だったんです」
「そうでしたの! 枡頭取の出身校だとは存じておりましたが、面接がそういう仕組みだとは知りませんでしたわ」

 お母様が驚いた様子で枡頭取を見る。周囲も枡頭取に注目している。
 頭取はちょっと鼻が高そうにして笑い、枡さんは気まずそうに肩をすくめた。

 綱は知っていたのだろうか。知っていたとしたらいつから? もう、中学二年の頃には知っていたのだろうか。