体育館を出て、校舎へ向かう。
 息が白い。
 綱は当たり前のようにジャケットを脱いで、私の肩にかける。ジャケットに残った体温が私を包み込んで、申し訳ないと思いつつ返すとはいえない。もっとこの暖かさに抱かれていたいから。

「校舎なんて入れるの?」
「最後に校舎の壁にプロジェクションマッピングをする関係で、鍵を預かっています」

 綱は悪戯っぽく笑った。
 非常灯だけが薄暗く光る階段を登る。
 息を切らして屋上のドアを押す。
 冷たい三月夜空。学校の鐘がそびえ立つ。
 重い音が響いて、背中のドアが閉じられた。

 正面には、学院の中央にそびえたつ、登校時間と下校時間を鳴らす鐘。いやなことがあったとき、逃げ込んでしまった籠のような場所。
 二人で入って腰を下ろす。狭いそこでは二人でくっつくことになる。触れあった場所が熱い。
 今夜は鍵をかける心配も、ドアを閉める必要もない。